
【結婚式の和装】白無垢・色打掛・引き振袖の基本。あなたは大丈夫?
和装は日本古来より伝わる伝統の衣裳。インバウンド需要が高まる近年、特に、「日本の美」や「和」の注目度が高く、結婚式やフォトウエディングでも「和」の人気が高まっています。
そんな中、和装といえば、「成人式の振袖や、大学卒業式の袴、夏祭りの浴衣ぐらいしか着たことがない・・・」なんて花嫁さんも実は少なくありません。
だからこそ、結婚式や撮影のタイミングで【和装】を着ておきたい!と思う花嫁さんが多いのかもしれませんね。
とはいえ、今まで和装にほとんど触れてこなかったのに、いきなり「花嫁が着るなら本振袖ですよ」なんて言われてもわかりませんよね。本振袖じゃない振袖って何?・・・と、頭の中はきっと?だらけですよね。笑
白無垢を花嫁が着るというのはなんとなく分かるけれど、細かいことはまったく分からないという方がほとんどです。
そこで今回は、長年、花嫁和装に携わってきたmitsuwaスタッフが、日本の美しき伝統文化である【和装】に関して、ぜひこの機会に知っておいて欲しい基本や常識についてご紹介いたします。
お客様からよく聞かれる「和装の疑問」なども含め、結婚式に着る白無垢・色打掛・引き振袖の違いや意味などをご紹介して参りますので、ぜひ参考にしてみてください。
花嫁の婚礼和装は4つ|白無垢・色打掛・引き振袖・黒引き振袖
まずは、花嫁さんが着る和装の種類について。主な婚礼和装は下記の4種類です!
【主な婚礼和装の種類】
- 白無垢(しろむく)
- 色打掛(いろうちかけ)
- 引き振袖(ひきふりそで)・本振袖(ほんふりそで)
- 黒引き振袖(くろひきふりそで)
花嫁衣裳は打掛(うちかけ)という羽織って着る着物と、振袖のように帯を締めて着る着物の2種類に分かれます。
白無垢とは全身を白で統一した姿。かつて武家の娘が挙式で着用した格式高い婚礼衣裳です。
色打掛とは柄や色が華やかな婚礼衣裳。こちらも白無垢と同等の格式高い婚礼衣裳で、主に披露宴で着用します。
引き振袖とは江戸時代の花嫁の婚礼衣裳。花嫁が着る振袖は婚礼用の特別なもので、おはしょりをせず裾を引きずって歩くことから引き振袖と呼ばれます。裾にはふき綿が入っており、裾の端が少しふくらみがあるのが特徴です。引き振袖は、本振袖、大振袖、と言うこともあります。引き振袖のうち黒地ものを黒引き振袖と呼びます。白無垢や色打掛と違い、挙式・披露宴どちらでも着用できます。
それぞれの違いや意味について、詳しくご説明します。
白無垢は、もともと武家の最高婚礼衣裳
白無垢は、神前式や仏前式で身にまとう伝統的な衣裳のこと。
上から下まで純白で統一した白い打掛です。
室町時代ごろから武家の娘の婚礼に用いられるようになった花嫁衣裳が白無垢の起源とされています。
実に500年もの時を越え、今に伝わる由緒正しい婚礼衣裳と言えます。
白無垢の持つ意味とは?
神前式の神様とはご先祖様のことを差し、両家のご先祖様にふたつの家がひとつになることを報告する儀式です。
だから、これに臨む花嫁の衣裳も神様に仕える人の衣裳と同じように白がふさわしいとされ、挙式用の衣裳として用いられたと言われています。
実際に白い衣裳には邪気を払い、神聖な儀式に挑む正装とされる、格調高い雰囲気を醸し出す衣裳とされています。
さらに、結婚式ということから「これからどんな色にも染まります」「身の清浄」という意味も込められ、嫁入りする花嫁にぴったりな衣裳だとされています。
ウェディングドレスに白が使われる理由も「純真無垢」「何色にも染まります」という同じような意味が込められていることから、「白」に思い描くイメージは世界共通なのかもしれません。
白無垢の下は、純白の振袖の「掛下」
白無垢の下ってどうなっているの?という質問をいただくことが多いので簡単にご紹介しておきます。
《白無垢の着付け順》
肌襦袢を着てしっかり補正
↓
長襦袢をまとって準備完了
↓
掛下を着て帯を締めたら振袖姿に
↓
打掛(白無垢)を羽織って完成
最初は襦袢と呼ばれるものを身にまとい、その上から「掛下」と呼ばれる振袖を着ます。
ここで着る掛下は本振り袖とは異なるものですが、白無垢を羽織らなくても良いのでは?と思うくらい、美しい姿になっています。
その上からさらに凛としたデザインの打掛(白無垢)を羽織って白無垢姿の完成となります。
表にはほとんど披露されない掛下ですが、その美しさは素晴らしいのひと言。
見えないところに手を抜かないところもまた、打掛の魅力のひとつなのかもしれません。
白無垢は主に挙式で着る婚礼衣裳
神前式の挙式にふさわしい和装は白無垢か黒引き振袖です。
そのため挙式で白無垢を着て、披露宴では振袖や色打掛にお色直しするのが一般的となっています。
白無垢レンタルの価格目安
白無垢をレンタルするなら、一般的なお値段の相場は18万~40万ほどとなります。実際には挙式当日は時間がないために、前撮りや撮影で白無垢を着用するという花嫁さんも多くいます。
最近は白無垢の生地の風合いや柄で変化をつけるのが人気
伝統的で古風な白無垢ですが、最近は生地の風合いや柄、織りなのか刺繍を使っているのか、などで質感に変化を出すのが人気です。
白一色の衣裳でも、柄や生地の質感が違えば、印象もがらりと変わるもの。
裾や袖口、襟元にあえて赤を挿したり、金糸や銀糸をあしらって上品にアクセントをつけたデザインなどもオススメです。
色打掛とは、絢爛豪華な和装のお姫様スタイル
”花嫁が着てみたい和装”の一番人気といえば、実は色打掛なんです。
実際に色打掛に対する憧れが強い人も多いのではないでしょうか?たくさんの色を使い、華やかに彩られた色打掛のデザインは、多様のひとこと。
縁起が良いとされる吉祥文様がほどこされた伝統を感じさせる花嫁和装ならではのものから、現代の美を取り入れたモダンなデザインまで幅広く存在しています。
色打掛の起源は室町時代
色打掛はもともと室町時代に武家で使われていた婚礼衣裳。小袖を着た上に帯を締め、その上から豪華な模様が描かれた着物を打ち掛けていたことから、打掛と呼ばれるようになりました。打掛のなかでも白いものは白無垢、それ以外の打掛を総称して色打掛と呼びます。
色打掛の格式は?挙式で着ても大丈夫なの?
昔は、色打掛は白無垢よりも格下とされており、白無垢とそれ以外で大別されていました。
そのため、挙式は白無垢で、色打掛はお色直し用の衣裳として用いられていました。しかし、近年では白無垢と同格として扱われ、白無垢と同様に花嫁衣裳を代表するものとなっていて、和装人前式では色打掛を身にまとって式に臨む花嫁さんもいらっしゃいます。
色打掛を挙式で用いるケースが増えていることもあって、現在では色打掛も白無垢と同等の格式とされています。神社によっては神前式でも受け入れてもらえる可能性があるため、一度相談してみましょう。
色打掛は主に披露宴で。最近では前撮りで使用するのが人気
引き振袖に比べてダイナミックな柄が多く、艶やかな美しさには思わず目を奪われてしまうほど。
少し前までは色打掛は披露宴の衣裳というイメージが多くありました。
しかし、ドレスに比べて着付に時間がかかってしまうというデメリットを解消するために、最近ではその活用方法も変わってきました。
●色打掛が着られるシーン
- 着付に時間が取れる挙式の衣裳として
- 着付に時間を取れる披露宴の最初の衣裳として
- 当日の衣裳はドレスで統一し、前撮り・フォトウエディング
結婚式で着る場合、色打掛を着るなら比較的着付時間を長く取れる挙式と披露宴の一着目。
少しでも長い時間、ゲストと一緒に過ごしたいという想いから「結婚式ではドレスを着るから前撮りで色打掛の姿を残しておきたい」という声も多いようです。
色打掛レンタルの価格目安
色打掛をレンタルする場合、一般的なお値段は20万~50万。さらに、高名な友禅作家の花嫁和装になると100万円を超える色打掛もあり、価格はピンキリです。
引き振袖と黒引き振袖って違うのは色だけ?
引き振袖は、江戸時代に武家の娘が婚礼衣裳として用いていた正式な和装です。
中でも黒が最も格式が高く「黒引き振袖」と呼ばれています。
未婚女性の最も格式高い礼装が引き振袖(本振袖・大振袖)
婚礼和装の中で、最も格式高い礼装と言われているのが引き振袖(または本振袖、大振袖)です。
裾が長く、裾を引きずって歩くことから引き振袖と名前がつけられました。
引き振袖は花嫁だけに許された最高礼装。
白無垢が「どんな色にも染まる」という意味を持つのに対し、黒引き振袖は「他の誰の色にも染まらない」という意味が込められていて、白と同様に人気の高い色となっています。
中振袖ってなに?大振袖と何が違うの?
ちなみに、中振袖はゲストが着用する振袖で、袖の長さが引き振袖に比べて少し短めになっています。さらに袖が短く、カジュアルな和装として用いられるのが小振袖。こちらは卒業式などで用いられることが多い和装です。
披露宴で着るなら黒引き振袖がオススメ
披露宴で和装を着る際、多く取り入れられるのが黒引き振袖。選ばれる理由としては多くのメリットがあるからでしょう。
大きく分けると以下の4つ。
●黒引き振袖のメリット
- 黒引き振袖には洋髪スタイルが似合う
- 模様が見えやすく写真栄えする
- 色打掛に比べると軽くて動きやすい
- お色直しに時間がかからない
中でも披露宴で着たいという場合「着やすく、動きやすく、軽い」というのは大きな魅力。
さらに洋髪スタイルが似合うとくれば、おのずと黒引き振袖に人気が高まるのは当然のことかもしれませんね。
引き振袖・黒引き振袖レンタルの価格目安
引き振袖をレンタルする場合のお値段は20万~40万円台となります。格式が高い分、黒引き振袖の方が高いイメージがあるかもしれませんが、実際には格式で金額が高くなることはありません。
披露宴で着るなら色打掛?引き振袖?
披露宴での婚礼衣裳だと色打掛が代表的ですが、引き振袖の場合帯が華やかで目立ちますし、着物と帯の組み合わせで自分らしさを出すこともできます。
引き振袖はモダンな色の掛け合わせも楽しめるからおしゃれな花嫁に人気。
色打掛同様に華やかで、かつ色打掛よりも動きやすいため、白無垢からのお色直しで引き振袖を選ぶ花嫁も多いです。
美しく華やかな分動きにくい色打掛と、それに比べるとやや見栄えの部分では劣るものの、お手頃な価格のものが多く、着付に時間がかからず動きやすい引き振袖。
それぞれのメリット・デメリットを把握した上でどちらを選ぶかを決めるのがおすすめです。
かつら?洋髪?和装のヘアスタイルはシーンや好みに合わせて
白無垢や色打掛には、文金高島田のかつらをかぶり、綿帽子や角隠しをまとうのが基本。
衣裳姿とかつら、角隠しや綿帽子のすべてを合わせて挙式にふさわしい花嫁姿が完成します。
とはいえ、「かつらはちょっと・・・」と抵抗感のある花嫁もいらっしゃるはず。
和装に洋髪を合わせることで和モダンな雰囲気を出せるので、洋髪×和装のスタイルを取り入れる花嫁が急増中です。
披露宴や前撮りなど、綿帽子や角隠しを必要としないシーンでは洋髪のスタイルも愛らしくておすすめ。
シーンや好みなどとも合わせて選びましょう。
白無垢・色打掛に似合うかつら「文金高島田」
和装を着る際にかぶるかつらの定番といえば文金高島田(ぶんきんたかしまだ)。
江戸時代に登場したマゲの1種で、明治時代に正装として定着したと言われています。
「文金高島田は似合うかしら?」「重たかったり圧迫感があるのでは?」と心配される花嫁も多いかもしれませんが、今はかつらも改良されているため、軽くて締め付けのないものがほとんどです。
文金高島田は日本古来の髪型で、日本人女性にこそふさわしいかつらです。
着物を美しく魅せるためのかつらでもあり、髪の毛の色や形、デザインなども微妙に違うので、自分のお気に入りのかつらを選びましょう。
角隠し(つのかくし)とは?
文金高島田のかつらの上にかぶる帯状の布のことを「角隠し」と言います。もともとは埃よけに使われたのが始まりとされています。
結婚式での意味に関しては諸説ありますが
- 「嫉妬や怒りの象徴として用いられる角を隠すことによって、妻は夫に従順になる」
- 「女は嫉妬に狂うと鬼になるといわれていたため、これを防ぐおまじないとして、角隠しを被った」
などがあります。角隠しは白無垢でも色打掛でも用いることができます。
綿帽子とは?
角隠しと同じく代表的な花嫁の髪型が「綿帽子」。文金高島田のかつらの上には、角隠しか綿帽子をかぶることになりますが、角隠しは白無垢でも色打掛でも用いることができるのに対し、綿帽子は白無垢でのみ用いることができます。最近では洋髪に綿帽子をあわせる花嫁も多いです。
白無垢姿をよりいっそう美しく、純真無垢という言葉にふさわしいスタイルにしてくれるのが「綿帽子」でしょう。「綿帽子をかぶることが憧れ♪」という花嫁も多いはずです。
綿帽子の始まりは婚礼とは関係ない?
もともとは外出着として防寒や埃よけに使われたのが始まり。
結婚式での役割は「式が終わるまで新郎以外の人に顔が見えないようにする」ことです。ちょうどウェディングドレスのベールと同じ役割を持っているんですね。偶然ですがキリスト教の結婚式と同じような考え方があったのかもしれません。
白無垢に綿帽子のスタイルは「奥ゆかしさ」「初々しさ」といった言葉がよく似合います。
綿帽子も角隠しも、現代にあわせて形や色などさまざまなスタイルが出てきています。伝統だけがすべてではなく、きちんとするところはきちんとさせながら、現代の美しさも取り入れていくと、よりいっそう素敵な花嫁姿になることでしょう。
和装小物は大きく分けて3種類!
花嫁和装には小物が必要。和装を着る際に必ずついてくるものなので、名称や由来、使い方などは事前に知っておきたいところです。普通の和装とは違い、それぞれ小物にも古くから受け継がれてきた日本ならではの深い意味があるのでこれを機に知っておきましょう。
和装の小物は古来の武家文化で培われた伝統的なものばかりです。
●主な和装小物
- 筥迫(はこせこ)
- 末広(すえひろ)
- 懐剣(かいけん)
小物①筥迫(はこせこ)
江戸時代、武家の娘が使っていた長方形の箱。紅筆や鏡、白粉、懐紙などを入れていた、今で言うところの化粧ポーチ。現在は、礼装の装飾品として胸元に挟みます。
一般的に、白無垢には白の筥迫(はこせこ)、色打掛には金色やその色に合う筥迫を用います。ですが最近では、あえて白無垢に赤や薄いピンクのはこせこを用いるなどしてアクセントとして使うこともしばしば。おしゃれな小物使いも和装衣裳を選ぶときのポイントです。
小物②末広(すえひろ)
和装の礼装で用いる扇子のこと。正装時は男女ともに末広を使います。扇子の形が末広がりなことから、「末広がりで縁起がいい」として「すえひろ」と呼ばれています。
こちらは主に顔を隠すために用いるもので、開いて仰ぐことはマナー違反とされています。知らずに恥ずかしい思いをすることがないように注意してくださいね。
小物③懐剣(かいけん)
懐剣は、もともと武家の女性が護身用として持っていた短刀のこと。現在は、婚礼衣裳の装飾品として胸元に挿して使います。袋に入っており、房がついています。「なぜお祝いの席に短刀を?」と不思議に思う花嫁さんもいらっしゃるかもしれません。実際、この短刀は、人に向けることを目的としておらず、魔よけ・厄除けの役割を担っています。
こちらも、筥迫と同様に、一般的には白無垢には白の懐剣を、色打掛や引き振袖にはそれぞれに合う色の懐剣を用います。
ブーケで和装姿を今どきオシャレに!
和装前撮りなどで、スタジオ撮影やロケ撮影などで、洋髪のゆるふわイメージに合わせて、手元にブーケを持ち、ナチュラルさを演出する花嫁さんも増えています。あえてドライブーケを持ってみたり、最近では、生花のブーケをフローリストさんに依頼して作成してもらう花嫁さんも。ブーケであなたらしさを発揮することもおすすめです。
男性の婚礼衣裳は紋付袴
女性の和装スタイルはたくさんありますが、男性の和装スタイルは基本的に紋付袴のひとつだけ。略称は紋付(もんつき)、正式名称は黒五つ紋付羽織袴(くろいつつもんつきはおりはかま)と言います。
●袴一着
- 羽織は黒の無地羽二重
- 背中の中心と両胸、両外袖に計5カ所、染め抜き紋が入っています
- 長着は羽織りと同素材、白羽二重の付け比翼仕立てで、こちらにも五箇所に紋が入る
- 袴は縞織りの仙台平
- 小物はすべて白で統一
以上の5項目が黒五つ紋付羽織袴の特徴です。ただし、現代和装として紺・白・グレー・茶色の紋付なども出てきているので、何でもかんでも「黒五つ」には当てはまらないかもしれません。
ちなみに、黒五つ紋付羽織袴は、和装における男性の礼服とされ、略礼装として用いられていたものが明治時代に正式な礼装として広まりました。
和装の花嫁姿を見せて祖父母に喜んでもらいたい
よく和装を着て一番喜んでくれたのはご両親やおじいちゃん、おばあちゃんだった!という声を聞きます。
中には、「こんなに和装姿を喜んでくれるとは思わなかった」という花嫁さんも少なくありません。
逆に、ドレスしか着なかったら「和装姿が見たかった…」と言われてしまうこともあるようで、年配の方は特に和装を1着ぐらいは着てほしいと思っている場合が多いようです。
もしかすると、ご両親や祖父母様にとって見たい花嫁姿のイメージは和装なのかもしれません。大切な人が喜んでくれるからと和装の花嫁になることは、とても価値があることだと思います。ぜひ、この結婚という節目に、和装を着て、お写真だけでも残しておくのはいかがでしょうか?
香川県には、和装の撮影にピッタリのロケーション場所である【特別名勝 栗林公園】があります。一生に一度の和装撮影を、ぜひ、たくさんの和装の中から選んで楽しんでくださいね!